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- ドクターズインタビュー
人間ドック・健康診断に力を入れて
取り組むようになったきっかけは?
人間ドック・健康診断に注力するようになった背景に、「病院と同等の診断能力を持つクリニックを目指したい」という思いがあります。私たち社会福祉法人三桂会には社会福祉施設もあり、そこに入居する方の健康管理も重要な課題となっています。一般的に入居者様の健康に何か問題が起こった時、クリニックは十分な診断能力を持ち合わせていないため、大きな病院へ搬送せざるを得ません。ですが、病院側も特定の障害などを持つ入居者様を受け入れるのが難しく、適切な診療を受けるのが困難なことがあります。こうした問題を解消するために、高い診断能力を持ち合わせたクリニックが必要だと思い、「凌駕クリニック 樋上本院」を開院しました。そしてこの高い診断能力は、福祉施設の入居者様への健康管理、また普段の診療だけでなく、人間ドック・健康診断にも活かせると考えて、力を入れて取り組むようになりました。
人間ドック・健康診断の重要性について
どのようにお考えですか?
私が長年携わってきた心臓外科や脳外科の領域では、しばしば突然死が発生します。多くの人は突然死を「運命」として受け入れがちですが、実は多くの場合、事前の検査やケアにより予防可能なのです。心筋梗塞や脳卒中は、初めての発作が命取りとなることが多く、それらを事前に予防するための人間ドック・健康診断は非常に重要です。
自治体が実施する健康診断との違いは?
自治体が実施する健康診断も重要ですが、心臓や脳の病気に関しては、人間ドック・健康診断の意義がさらに高まると言えます。現状、自治体の健康診断での心臓や脳に関する検査は十分なものとは言えません。例えば、心臓に関しては心電図だけが行われることが多いのですが、実際には心電図だけでは十分な情報が得られません。心電図だけでわかる心臓の病気は、全体の1/10もないと言われています。私たちが推進する人間ドック・健康診断は、これらの問題点を克服し、真に有意義な健診を提供することを目指しています。
それは「心臓や脳の検査は難しい」と
いうことでしょうか?
そうですね。例えば心臓の場合、弁膜症、冠動脈、そして心筋病という3つの異なる系統が存在します。通常の健診だけでは、これらの疾患を特定することは難しいのです。弁膜症に関してはエコー検査が必要で、冠動脈の問題には造影CT検査が必要です。心筋に関しては、最終的には生検を行う必要があることもあります。なので、本格的な心臓の健診を希望する場合、より専門的な検査が必要となります。しかし、多くの健診センターではこれらの専門的な検査は提供されていません。特に心臓のCTに関しては、循環器専門医が必ず立ち会わなければならない規定があるので、一般の健診クリニックでは実施が難しいのです。なお、当院には循環器専門医が在籍しており、造影CTも導入しておりますので、今挙げたような専門的な心臓の検査を実施することができます。
循環器専門医以外に、どのような
ドクターが在籍していますか?
心臓血管外科専門医、外科専門医、そして脳神経外科専門医が在籍しています。加えて、一般内科の認定医も在籍しています。当院では現在、「心臓ドック」「脳ドック」「全身ドック」「フルドック」などの人間ドック・健康診断のコースを設けていますが、これらはそれぞれの分野のプロフェッショナルが考案・監修したコースとなります。
コンセプトは「突然死の予防」
「ステージング」
によりリスクを評価
凌駕クリニック 樋上本院の
人間ドック・健康診断のコンセプトは?
これは以前からの私の持論で、講演でも何度もお話ししていますが、当院の人間ドック・健康診断のコンセプトは「突然死の予防」です。健診を受けるきっかけとして、死因のトップに位置する「がん」の早期発見も重要ですが、それに関してはすでに多くのクリニックで取り組まれています。一方で「突然死をどう予防するか?」というアプローチについては、取り組まれているクリニックが少ないと感じています。
突然死の予防のために、どの程度の頻度で
健診を受けるべきなのでしょうか?
がんは突然変異で起こるため、いつ発症するか予測は難しいです。なので、理想的には半年ごとの検診、実際的には年1回の検診が推奨されています。一方、心臓や脳の健診は異なります。動脈硬化などの突然死に繋がるリスクをきちんと評価すれば、それに基づいた健診プログラムを組むことができます。動脈硬化は、20歳を超えればどなたにも存在します。しかし、初期の動脈硬化であるとわかれば、脳や心臓の健診を4~5年受けなくても問題はないと言えます。ただし、動脈硬化の進行を正確に評価するためには脂質異常症(高脂血症)、高血圧、肥満、ストレス、食事、糖尿病など多岐にわたるファクターを考慮する必要があります。コレステロール値だけを基に判断するのは適切と言えず、血管造影を含めた総合的な健診が必要となります。
健診の頻度や内容は、各疾患やリスクに
応じて決定されるということですか?
そうです。心臓や脳の健診を毎年受ける必要があるかどうかは「ステージング」によって決まります。ステージングとは、総合的な健診により突然死のリスクを評価することです。ステージングの内容によっては「3年に1回」や「5年に1回」で十分な場合もあるのです。何も問題がないのに毎年健診を受けることは、患者様にとっても医療資源にとっても無駄になります。疾患の性質やリスクを正確に理解し、適切な間隔での健診を受けることが重要です。
自分の体の「立ち位置」を知る
そのためにもまずは一度、
人間ドック・健康診断の受診を
「健診=ステージング」と言えますね?
まさにそうです。突然死のリスクが適切に評価されていれば、不幸な事態も防げるはずです。こうしたステージングがなされておらず、「健康だから大丈夫」と過信していると突然の事態に見舞われることがあり、特に心臓の問題はがんとは異なり突然現れることが多いので注意が必要です。この「健診=ステージング」という考えがもっと広まれば、多くの方が積極的にご自身の健康管理に努められるようになるのではないでしょうか。今もお話した通り「健診は毎年受けなければいけない」というわけではなく、それはステージングによって変わるので、これまで「毎年受けるのは面倒」と考えて受診に至らなかった方にも、是非一度、当院で総合的な人間ドック・健康診断を受けていただきたいと思っています。
最後に、サイトをご覧の方へ
メッセージをお願いします
私自身、心臓外科の専門家として最終的な治療、例えば心臓の手術などを行う立場にありました。しかし、私の願いはそうした段階に至る前に、病気や健康問題を発見してもらうことです。そのためには、自分の体の「立ち位置」を知ることが非常に大切です。ご自身の健康状態がどのステージにあるのか、毎年の健診が必要なのか、それとも4~5年に1回でいいのか、そうしたことを評価するためにも、まずは1回、人間ドック・健康診断を受けていただければと思います。